『アイミタガイ』映画感想文・悪なき世界、なのかな

とても心温まる話で、途中何度も目頭を押さえました。

黒木華さんって品の良さ漂う方ですよね、好きです

あらすじ

ウェディングプランナーとして働く梓は、親友・叶海が亡くなったことを知る。恋人・澄人との結婚に踏み出せずにいる梓は、生前の叶海と交わしていたトーク画面に変わらずメッセージを送り続ける。同じ頃、叶海の両親である朋子と優作のもとに、とある児童養護施設から娘宛のカードが届く。そして遺品のスマホには、溜まっていたメッセージの存在を知らせる新たな通知が入る。一方、金婚式を担当することになった梓は、叔母の紹介でピアノ演奏を依頼しに行ったこみちの家で、中学時代の叶海との記憶をよみがえらせる。

2024年製作/105分/G/日本
配給:ショウゲート
劇場公開日:2024年11月1日

(『映画.com』より引用)

感想(ネタバレ含む)

こんな風に温かく巡る人間関係、優しい世界があってもいいんじゃないか、と語りかけてくるような映画でした。

梓を演じる黒木華さんの、ナチュラルな心の揺れにはとても現実味がありましたが、一方でどこか不思議な、おとぎ話のような空気感もありました。

あれ?と思ったのは始まって間もなく。

カメラマンの叶海が町中で写真を撮るのですが、よそのお子さんを含む家族や女子学生に、無断でカメラを向けるのです。

これは現代では許されないことですし、カメラマンなら当然心得ていることのはず。

おかしいなぁ…と心に引っかかっていたのですが、これはもしかしてファンタジーというアピールだったのかもしれないと後から思いました。

つまり「他人の写真を撮って悪用するような人間のいない世界」の話なのではないかと。

その割には、中学時代のいじめっ子は悪かったし、結婚する澄人の同僚女性の調子に乗りっぷりや、梓が独身でウエディングプランナーをやっていることに渋い顔をしたオバサンも感じ悪かったし、チョイチョイ類型的な嫌な奴は出てきました。

その辺も排除されていたら間違いないのですが、どうなのか…ちょっとわからないところでした。

でも多分、人間の善性を信じたいけれど難しい今の時代に、恐れることなく繋がりを求めて、信頼し合う人たちを描いてみせたかったのは確かだと思います。

昔はこんな風にもっとおおらかだったな、生身の人間同士の繋がりがもっと密だったな、と懐かしい気持ちにもなりました。

ちょっとした出会いはそこらじゅうにあるけれど、その縁を目に見えるように繋いだのが、亡くなった叶海の不思議な力だったのかもしれません。

世の中すべての人々の集合的無意識が、この映画のように善なるもので繋がっているといいのにな…と強く感じました。

キャストの皆さんはどなたも味わい深くて魅力的。いいキャラクターの方ばかりでした。

タクシードライバーとして、今年『Chime』で怪演をこなされた吉岡睦雄さんが出演されていたのが、サプライズ的で嬉しかったです。

何かしでかすんじゃないかとドキドキしましたが、さすがに何もありませんでした(笑)

見終わって、真っ当に誠実に生きていこうとあらためて心に誓いました。

エンディングテーマが黒木華さんの歌で、とても味わいがあって、良かったです。

本当にいい映画でした。