『ホワイトバード はじまりのワンダー』映画感想文・年末になって年間ベスト級の作品が来てしまった

前作『ワンダー 君は太陽』を見ていないので鑑賞を迷ったのですが、他の作品との繋ぎが良く「ついでに、見てみようかな」ぐらいの気持ちで鑑賞しました。

すると、すごくいい作品でびっくり! 翌日の今日も余韻が残って、思い出しては目頭押さえている私です。

二人の繊細な演技が最高でした

あらすじ

いじめによって学校を退学処分になり、自分の居場所を失っていたジュリアンのもとに、パリから祖母サラが訪ねてくる。孫の行く末を心配するサラは、彼に自身の少女時代について語りはじめる。1942年、ナチス占領下のフランス。ユダヤ人であるサラは、学校に押し寄せてきたナチスに連行されそうになったところを同じクラスのいじめられっ子の少年ジュリアンに助けられ、彼の家の納屋に匿われる。クラスでいじめられていたジュリアンに全く関心を払わなかったサラを、ジュリアンと彼の両親は命懸けで守ってくれる。サラとジュリアンが絆を深めていくなか、終戦が近いというニュースが流れるが……。

2024年製作/121分/G/アメリカ
原題または英題:White Bird
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2024年12月6日

感想(ネタバレ含む)

前作でジュリアンはいじめの加害者となり、退学、転校したのですね。

サラの経験を踏まえると、孫のしたことは見過ごせない出来事だったのでしょう。冒頭で「退学」になったのだと厳しい表情で言い換えたのが印象的でした。

孫に何かを感じてもらいたいと、サラは自分の過去をジュリアンに語り始めます。そのため前作を見ていなくても理解に困ることはありませんでした。

ナチスドイツ占領下のフランス。ユダヤ人であるサラを救ったジュリアン(サラの孫ではない方。同じ名前を孫につけたのですね)と、一年以上にわたり世話をし続けたその両親の、勇気と心優しさには大変心打たれました。

ジュリアンはサラにほのかな恋心を抱いていたようですが、サラは小児麻痺でいじめられているジュリアンの存在をほとんど気にしたことがありませんでした。

もし見つかれば殺されるという状況にも関わらず、見返りも求めず、ジュリアンと両親はサラをかくまい続けます。

味気ない納屋での生活の中、空想の旅で遊ぶ二人の健気さ、美しさが本当に素敵で、「アンネの日記」を思わせる感動がありました。

「現実は有限、想像は無限」というサラの台詞があり、両親が行方不明で不安な中、心を強く持てたのは、ジュリアンと豊かな想像力のおかげだったのでしょう。

愛情が芽生えた二人に明るい未来が見えそうになった矢先、悲劇の展開となり、予想はしていたものの、ジュリアンにものすごく感情移入していた私は残念でなりませんでした。

飛び級するほど頭が良くて、優しくて、足は悪いものの、勇気と度胸があり、しかも大変繊細な心の持ち主であるジュリアン。こんないい子がどうして…と涙が止まりませんでした。

どうしてユダヤ人でない彼が連行されたのか、わけが分からないのですが、かつては同級生で机を並べていた子どもたちが、敵味方となってしまう異常さには、本当にやりきれないものがありました。

また、サラを追ってくるナチスの思想に染まった同級生だけに噛みついたオオカミ…そこだけ少しファンタジーのようで違和感はありましたが、自業自得とはいえ、彼もまた被害者であったように思いました。

ジュリアンの最期が悲しすぎて、ラストのサラおばあちゃんの講演があまり頭に入らなかったのが残念です。多分そこに監督の言いたいことが集約されていたのでしょうね。

孫のジュリアンも、この話で救われたのではないかと思います。いじめられる方はもちろんですが、いじめる方の子どもも何かに傷ついてそうなってしまったのであり、排除して終わりではなく、彼もまた救われなくてはいけないのです。

『ワンダー 君は太陽』は孫のジュリアンがいじめの加害児童のようで、少し気が進まない部分もあったのですが、今作で救いがあったと信じて、見てみようと思います。