『どうすればよかったか?』映画感想文・家族といえども人は変えられない

公開以来、満席が続いて2週間。ようやく少し空席が出るようになったので鑑賞しました。

終演後は嗚咽や鼻をすする音があちこちから聞こえました。

食卓を共にするシーンが多かったです

あらすじ

ドキュメンタリー監督の藤野知明が、統合失調症の症状が現れた姉と、彼女を精神科の受診から遠ざけた両親の姿を20年にわたって自ら記録したドキュメンタリー。

面倒見がよく優秀な8歳上の姉。両親の影響から医師を目指して医学部に進学した彼女が、ある日突然、事実とは思えないことを叫びだした。統合失調症が疑われたが、医師で研究者でもある父と母は病気だと認めず、精神科の受診から彼女を遠ざける。その判断に疑問を感じた藤野監督は両親を説得するものの解決には至らず、わだかまりを抱えたまま実家を離れる。

姉の発症から18年後、映像制作を学んだ藤野監督は帰省するたびに家族の様子を記録するように。一家全員での外出や食卓の風景にカメラを向けながら両親と対話を重ね、姉に声をかけ続けるが、状況はさらに悪化。ついに両親は玄関に鎖と南京錠をかけて姉を閉じ込めるようになってしまう。

2024年製作/101分/G/日本
配給:東風
劇場公開日:2024年12月7日

(『映画.com』より引用)

感想(ネタバレ含む)

感動というより、やりきれなさの残る映画でした。やはり親の責任は重いです。

厳しいようですが、ひとりの能力ある女性の人生を活かせないままにしてしまったということ。

どうすればよかったかと言えば答えは歴然で、最初に異変があった時に適切な治療を開始していれば良かったのです。

しかし、それが両親にはできなかった。そして、家族である藤野監督も両親の考えを変えることができませんでした。

家族といえども、他者を変えることはできません。ましてやそれが両親二人を相手にするとなれば、その壁は厚く不可能です。

藤野監督は大変苦悩されたと思います。

そして、医療につなぐという「こうすれば」よりも前に、親子関係において根深いものがあったように思えてなりません。

「自分たちの思い通りに育てたい」という強要に子どもがプレッシャーを感じ、それが積み重なって発症の原因となっていたのではないかと想像しました。

また、明らかに治療を必要としている状況において、拒絶し続けたのは医療ネグレクトとも言えそうです。

治療を受けさせない信念、それが失敗であっても間違いを認めない。最終的には互いに配偶者のせいにして、自分が責められるのを避ける。そんないびつさが見て取れました。

ただ、人生の最期において、少しでも穏やかな感情をマコさんが取り戻せたのは何よりでした。

藤野監督に対して、お姉さんをドキュメンタリーの素材として利用していたのではないかという意見も見かけましたが、私は撮影の目的でもなければ関われなかったのではないか、と思いました。

この両親と姉がいる家に居続けるのは、とても大変です。疎遠になっても仕方がない状況で、精一杯できることをされたのでしょう。

両親からすれば、たまに帰ってきて娘のことを指図されれば違和感も覚えます。そんなに簡単に説得できるようなものではないのです。

この映画が希望になるとすれば、同じような状況にある家庭が少しでも早く、適切な治療を受けて、穏やかな生活を取り戻すことです。

幸い、多くの方が鑑賞されているので、治療後のマコさんの姿に希望を見出してほしいと願います。