『ラーゲリより愛を込めて』人としての尊厳を忘れないこと

ラーゲリとは〈強制収容所〉のこと。第二次世界大戦後のシベリア抑留により壮絶な労働環境に置かれた日本人たち。心身ともに極限にある抑留者の中で、ひとり希望を失わず、仲間を励まし続け、家族と再会する日を願い続けた主人公、山本幡男(二宮和也)。彼の言葉と行動が、仲間たちに変化をもたらしていく…実在する人物のお話です。

冒頭からかなり過酷なつらいお話。それでもなぜか観ているこちらが山本から励まされているような錯覚を味わいます。「信じて言葉にすることで周りを勇気づける。自分の正しいと思ったことは行動で示す」そんな姿に心を動かされます。私が感じたのは次の五点です。

1.身につけた知識、知恵は自信になる

2.人としての尊厳を持ち続けるという信念

3.利他心は巡り巡って自分に返ってくる

4.どんな状況の中でも楽しみを見いだすことが、生きる力となり得る

5.自らの生き方をもって、残された者に道義を示していく大切さ

やはり、自分の心に一本の大きな柱があるということは、何よりも強く幸せなことです。周りの仲間達が変化していくのは、失いかけていた自分の本当の生き方というものを山本が身を持って教えてくれたからでしょう。

絶望的な状況の中で希望を失わず生き抜く主人公、と言ってしまえば斬新な切り口に見えないかもしれません。しかし、人間としての尊厳、道徳心、正しく生きたいという信念を描くことはとても大切なことです。形を変えて何度でも映画にしてほしい、不変の題材だと感じました。

今年最も泣いた映画でした。ラストはどうなるか想像に難くない、わかっている。わかっているのですが「そうありたい」という共感が感動を生む作品でした。