『アイアンクロー』映画感想文・ずるいよ…あのシーンは…

評判を聞いてずっと観たいと思っていた作品、やっと観られました。

何週間か前に、平日満席で帰ってきたことがあり、多くの方が劇場に足を運んでいる印象があります。

私自身、プロレスはよく知らず、フォン・エリック・ファミリーやアイアンクローは世代的にかろうじて知っている、くらいでしたが、とても良かったです。

よく知っている方ならもっと楽しめるでしょうね。

あらすじ


1980年代初頭、元AWA世界ヘビー級王者のフリッツ・フォン・エリックに育てられたケビン、デビッド、ケリー、マイクの兄弟は、父の教えに従いプロレスラーとしてデビューし、プロレス界の頂点を目指していた。しかし、世界ヘビー級王座戦への指名を受けた三男のデビッドが、日本でのプロレスツアー中に急死したことを皮切りに、フォン・エリック家は次々と悲劇に見舞われ、いつしか「呪われた一家」と呼ばれるようになっていく。

2023年製作/132分/G/アメリカ
原題:The Iron Claw
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2024年4月5日

『映画.com』より引用

感想(ネタバレ含む)

兄弟レスラーとして名を馳せながらも「呪われた一家」と呼ばれ、次々と亡くなっていきます。

この映画では5人兄弟のように描かれていますが実際は6人で、うち5人が若くして亡くなっています。

中でも3人もの自殺者がいることが、とても悲しく、最後は涙なしには観られませんでした。

物語の前半は、兄弟が父の導きでプロレスの道を歩み始める物語。割と楽しい家族・兄弟のシーンが続きます。

ところが、次々と彼らに不幸が襲いかかり、あっという間にケビンだけになってしまいます。

終盤の、亡くなった兄弟たちが死後の世界で再会を喜び合うという場面!

「ズルい、こんなのズルいよ〜」と涙涙でした。

次々と兄弟が亡くなっていくだけではどう考えても悲しすぎるので、このような演出にしたのかもしれません。

そして、ひとり残ったケビンが、最後に自分の築いた家族で幸せに過ごす様子が感動的でした。

見ているこちらも救われる気持ちになり、よい気分で見終えることができました。

意外だったのは、父親フリッツ・フォン・エリックのプロレス英才教育がそれほど厳しく描かれてはいなかった点。

もっと星一徹ぐらい追い込んでいるのかと思っていたのです。

ただ、両親ともに彼らの心のケアをあまりしていないように見受けられ、親に相談をしても「兄弟で解決しろ」と丸投げする場面が気になりました。

屈強な肉体の持ち主であっても、彼らはそれぞれ繊細な部分を持ち合わせていて、本当はレスラー以外の資質があったのかもしれません。

父親がレスラーだったからといって子ども達が皆レスラーに向いているとは考えにくいですよね。

また父親は、自分の叶えられなかった夢を子どもを通して叶えようとしており、これはあまりよろしくないパターン。

自分の理想に当てはめるので、子ども本来の資質をあまり見ていないようでした。

子どもの観察は本当に大切だと感じましたし、救える子どももいたのではないかと、やりきれない思いがしました。

親ができることは多かっただろうと思います。特に母親の役割は重要だったはずですが、なんだか存在感のちょっと薄い母親で、残念だったのですよね…。

だからこのような結末になったのだということなのですが。

最後に、ひとつだけひっかかったのは、ケビンとのちの妻パムの出会いから交際までがちょっと強引だったこと。

パムがファンとして会場の外でサインを求め、なぜかすごい強気で「私を誘わないの?」的な態度にケビンが乗せられ、そこから展開が早くて違和感がありました。

美人だから仕方ないのかもしれません。しかしもうちょっと紆余曲折あってもいいんじゃないかとは思いました。

あまり本筋とは関係ない話なので省略したのでしょうが、雑な部分があるとひっかかりますよね。

どこかでパムが悪女に転じるのでは? と少し疑ってしまいました。

それを差し引いても、とてもいい作品でしたけどね。

パムがいい奥さんで本当に良かったです。