とても優しく心地の良い作品。初めはギクシャクしておかしな間合いの3人ですが、旅に出て喧嘩や告白をしながら絆を深めていく珍道中が微笑ましい!
(あらすじ)
新宿二丁目で食事処を営むなっちゃんが急死した。従業員のモリリン(渡部秀)は元ドラァグクイーン仲間のOLのバージン(滝藤賢一)、オネエタレントのズブ子(前野朋哉)を呼び出す。
なっちゃんは家族にカミングアウトをしていなかったため、証拠を隠すために自宅に侵入。上京した母・恵子(松原智恵子)と出くわす。
岐阜県郡上八幡での葬儀に呼ばれた三人は、なっちゃんのひみつを守り通すつもりで郡上八幡へ向かう。
少しお疲れ気味のドラァグクイーンを滝藤さんが繊細に表現されていました。なっちゃんから託されたキーアイテムを、バージンはどうするのかが見どころのひとつ。そしてラストシーンの後、彼女はどうなっていくのか思いをはせるのも楽しいです。
私はバージンがこの旅で人と触れ合い、仲間と共感し合い、気持ちが変化して、再び華やかな世界に戻っていく姿を思い浮かべました。自分を偽らずに生きることは、時に難しくもありますが、美しく魅力的なのです。
ドラァグクイーンの彼女らを取り巻く世界は、温かいものばかりではなく、バージンが疲れたと話す原因であったのかもしれません。ただ一方で偏見を超えて共感や理解が得られる世界や、同じ「踊り」で心が通じ合う世界も確かにあるのです。お母さんの松原智恵子さんの親としてのあり方も優しさがあふれていました。
滝藤さんはどんな服も着こなすおしゃれな方という印象が元々ありましたが、きらびやかな衣装をまとえばそう見えるのは勿論、パンツスタイルの普段着からその仕草、歩き方まで「ドラァグクイーン」バージンにしか見えないところが大変素敵でした。
コメディとしても楽しく、また、キャラ先行のズブ子はさておき、モリリンのショータイムの美しさも必見です。寒さ厳しき折、心がほっこり温まる、いい作品でしたよ!