俳優でもある齊藤工監督による、サスペンス映画。原作は未読のため、どう展開するのかわからない怖さがありました!
念願のマイホームを建てた夫婦、しかし次第にその家で異変が起こるようになり…という話です。
ホラーは、正体が明らかになると「造形確認」にやっきになってしまい、どうも恐怖心が薄れてしまいます。
得体の知れないうちが最も怖いと思うのですが、それよりもさらに怖いのはやはり人間そのもの。
家に何者かの気配を感じるって、もっのすごく怖いです。
昔、一人暮らしの時に…まぁ長くなるのでまたの機会にしますが、めちゃくちゃ怖かった時があります。気になる方は個人的に聞いてください(笑)
この『スイート・マイホーム』。全体のトーンは明るいのですが、主人公賢二(窪田正孝)の実家、過去の話になると急に暗くなり、その対比が大変良かったです。
賢二がこの陰気な家(と過去)から逃げ、相当な苦労をして今の家庭を手に入れたことが想像できるのです。
また、甘利と奈緒さん演じる本田がはじめから不気味対決で、どっちだ!?というハラハラがありました。
奈緒さんを疑ったのは、『#マンホール』『事故物件』と、最近サスペンス・ホラー作品によく出られていたからです。それがなければ、怪しまなかったかもしれません。
甘利が怪しすぎたので、逆にこの人は関係ないかも…と予想し、やはりという感じでした。
この辺の誤解を誘うあたりはさじ加減が難しいですね。
おそらく意外な人が犯人として関わっているのは確実なので、必然的に絞られてくる人物か、または全く違う霊的なものか。
お兄さんの言動から、超常現象の可能性もチラホラ感じられます。
『ブギーマン』に出ていたような、子取り鬼という子どもにしか見えない霊の類なのだろうか、などとあれこれ考えました。
引っ越しを期にあれよあれよという間に幸せな家族が転落していくさまが、恐ろしかったです。
家という高い買い物をしてこんなことが起こり、ローンはどうなるのか、まさに事故物件、もうここは売れない…と、別の意味でもゾッとしました。
「まほうの家」は社員の不祥事に責任を取ってくれるのでしょうか。まったくとんでもない大損害です。
その後どうなったか気になるので、オリジナルでパート2を作っていただきたいです。
こうして、いろいろと妄想がふくらむ後半でしたが、私はラストシーンの最後の最後まで、主人公が意識混濁で平常心を失い、奈緒さんと蓮佛さんを間違った…という最悪パターンを期待していました。
それでは全員ちょっと頭がおかしすぎるのですが、それぐらいの狂気に振り切っても良かったのでは、とは思いました。
あと、もうひとつ、空気が家を循環するのをもっと利用してほしかった、というのはあります。
犯人が何らかのガスを撒いて家族全員を眠らせるなど、設定が使えそうだったので少しもったいなかったかもしれません。
原作があるので勝手に変えられないのは承知ですが、映画として、ああだったら、こうだったら、と、妄想しがいがあって、とても楽しめました。
しかし、それにしても怖いラスト。その後どうなるのか、やはり気になります。
この家さえ買わなければ、幸せな家庭のままでいられたのに、というのがなんとも切なく、現在幸せに暮らす誰もが、砂の城、もしくは薄氷の上にいるのではないかと感じました。
何がきっかけで、どうなるかわからないものです。
斉藤工さんは人気俳優ではありますが、とても面白い映画を撮られることに驚きました。才能豊かで素晴らしいですね。過去作も観たいと思いました。
監督に専念されてもよいかも…と勝手なことを言いつつ、次回作もぜひ楽しみにしております。