心をかき乱されるような愛憎劇、というわけではありませんでしたが、とても興味深く拝見しました。
ソ連占領下のエストニアが舞台で、軍モノということと、実話に基づいているところが注目点。
しかし、観ながら…何か見たことがあるような気がしていて、なんだろうなんだろう?と思っていました。
家に帰ってから分かりました。ちょっと「再現ドラマ」のようだったのです。
目次
1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終える日を迎えようとしていた。
そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が、セルゲイと同じ基地に配属されてくる。
セルゲイは、ロマンの毅然としていて謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われる。ロマンも、セルゲイと目が合ったその瞬間から、体に閃光が走るのを感じていた。
写真という共通の趣味を持つ二人の友情が、愛へと変わるのに多くの時間を必要としなかった。しかし当時のソビエトでは同性愛はタブーで、発覚すれば厳罰に処された。
一方、同僚の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)もまた、ロマンに思いを寄せていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐は、二人の身辺調査を始めるのだった。
『ファイアバード』公式HPより引用
2021年製作/107分/R18+/イギリス・エストニア合作
原題:Firebird
配給:リアリーライクフィルムズ
劇場公開日:2024年2月9日
セルゲイが兵役についている間の、写真を通してロマンと愛情が育まれる部分はとても良かったです。
二人の間を阻むものは法律、といっても、障害があることでさらに愛情が深まります。
しかし、セルゲイの兵役が終わり、一年もの間交流が途絶えました。真面目な話、それは普通、関係の終わりを指すのではないでしょうか。
お互いにずっと想い続けていたとは考えにくく、一度は諦めたのだろうか?と思いました。
さらに、ロマンはルイーザを妻にして、セルゲイの元に再び現れます。
こんなことをするかな? という気もしました。
結婚するにしても、セルゲイの友人ルイーザだけは避けるのが普通なのではと思い、ロマンの気持ちがつかめず、少し感情移入がしにくくなりました。
そこからはセルゲイ・ロマン・ルイーザの三角関係のようになり、ごたつくのですが、特に再現ドラマのように感じられたのはこの辺りです。
ロマンが亡くなり、結局、お互いの愛情がどの程度のものであったのかはわかりにくく、はかない同性愛の思い出のようになってしまいました。
ただ、映画としてどうかというよりも、エストニアでの同性婚を認める法律が施行されるきっかけとなったということが凄いです。
製作の皆さんも誇りを持っていらっしゃるに違いありません。
そんなこともあり、映画の力を感じた作品でした。