『ありふれた教室』映画感想文・カーラ先生を応援する

盗難事件とその調査方法をめぐり、善良ないち教師が窮地に立たされ、追い詰められていく話です。

学校の先生が見たらゾッとすると思いますね…。

あらすじ

仕事熱心で正義感の強い若手教師のカーラは、新たに赴任した中学校で1年生のクラスを受け持ち、同僚や生徒の信頼を得ていく。

ある時、校内で盗難事件が相次ぎ、カーラの教え子が犯人として疑われる。校長らの強引な調査に反発したカーラは、独自に犯人捜しを開始。

ひそかに職員室の様子を撮影した映像に、ある人物が盗みを働く瞬間が収められていた。しかし、盗難事件をめぐるカーラや学校側の対応は、やがて保護者の批判や生徒の反発、同僚教師との対立といった事態を招いてしまう。

後戻りのできないカーラは、次第に孤立無援の窮地に追い込まれていく。

2022年製作/99分/G/ドイツ
原題:Das Lehrerzimmer
配給:アルバトロス・フィルム
劇場公開日:2024年5月17日

『映画.com』より引用

感想(ネタバレ含む)

ドイツの教育事情というものは分かりませんが、主人公の教師カーラの感覚は自分と近いものがありました。

ただ、優しすぎるというか、意志の強さが少し足りない気もしました。

若手教師だからか、何か言われたらとても気に病んで、自分の正義を貫くことができないところがあります。

隠し撮りのやり方も中途半端で、やるなら徹底的にやればいいのにと思ったりしました。ダメでしょうか(笑)

私ならお財布の中身の前後まで、どうせなら撮りますね。

犯人がしらばっくれたり、逆ギレしたりするなら、弁護士や警察にも相談しますし、粛々と進めていきます。

この学校のように、盗難が頻発しているのであれば、ダメなものはダメとして毅然とやっていけばいいと思うのです。

なにか皆、雰囲気とか気分で動いていて、そこがスッキリしないポイントでした。

それにしても、星のシャツの事務員クーンは、一切罪を認めずで、メンタルの強さにはあ然としました。

服撮られてるのに違うってよく言える…

声が大きい者が勝つという構図は明らかにおかしいので、きちんとやるべきです。

息子は母親が窃盗犯であることを暗に認めたのだと思いますが、カーラのPCを盗んで破壊。

カーラ先生クラウドにバックアップは取ってあるんでしょうね! と確認したくなりました。

若い先生だからか、保護者からも突っ込まれるし、本当に可哀想でした。

ラストシーンはかなり意外なもので、停学処分のクーンの息子が登校してしまい帰らず、警察官に担がれて学校を後にする、というものでした。

堂々と言い張るものが勝つ世界、という皮肉に見えました。やはり親子で似ているなという気もしますね。

カーラから与えられたルービックキューブを持ってくるために登校したのは、彼なりの心を開く気持ちの表れだったのでしょう。

しかしそれが解決の糸口になるのかどうかは、親次第とも言えます。母親が泥棒とか、最悪じゃないですか。

本当にあの事務員の母親、罪を認めて償って欲しいと思いましたが、それが全くなされなかったのが、この映画にモヤモヤが残った原因のひとつです。

こうしてひとつの事件からガタガタとすべてが狂い始めていく様子を見ていると、普段均衡の保たれているように見える私達の生活も、薄氷の上なのだろうなと感じずにはいられません。

そういった意味で、恐ろしさも感じた作品でした。

とにかく、泥棒事務員クーンが逃げ切るような世界であってはいけないとだけは思います。

ラストシーン以降もカーラ先生には立ち直って頑張ってもらいたいです。

ミッシング、関心領域、胸騒ぎ、ありふれた教室…最近胸糞映画ばっかり見てしまい、気が滅入ってきました…ちょっと方向性を変えたいと思います。