邦題からイメージされるような景気のいい話ではなく、妙に暗い物語。
やってしまったことをウジウジ悩んでばかりいて、だったら爆破なんて最初からやめとけばよかったのに…と身も蓋もない気持ちにさせられます。
旅行でも家を建てるでも何でも、計画を立てている時が一番楽しいと言われます。
ジョシュには楽しそうに見える瞬間が全くありませんでしたが、爆破するまでは楽しかったのでしょうね。
「やったー!」とか言わせないところがケリー・ライカート監督。
目次
過激な環境保護論者たちが企てたダム爆破計画の顛末を、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ、「アイ・アム・サム」のダコタ・ファニング、「17歳の肖像」のピーター・サースガードら豪華実力派キャスト共演で描いたサスペンスドラマ。アメリカ、オレゴン州。過激なエコ思想を持つ青年ジョシュは、アフガン帰りの元軍人ハーモンや裕福な少女ディーナと共謀し、水力発電ダムの爆破を企んでいた。作戦は順調に進み成功するかに見えたが、トラブルが起こったことで完璧だったはずの計画がほころびはじめる。監督・脚本は、「ウェンディ&ルーシー」の女性監督ケリー・ライヒャルト。
2013年製作/112分/アメリカ
『映画.com』より引用
原題:Night Moves
非常に抑えたトーンで、ダム爆破における高揚感もなにもなく、仕方なく計画したようにさえ見えます。
言い出したのが誰かはっきりしませんが、調子のいい男ハーモンが、かなり煽ったのではないでしょうか。
かろうじて成功はしたものの、想定外の連続、さらに爆破により死者も出てしまい、気分の落ち込みや疑心暗鬼に襲われるジョシュ。
ディーナもそうですが、こんな弱メンタルの人が犯罪を行ってはいけないという、よい例だと思いました。
気弱な過激派であるジョシュは不安に耐えきれず、ディーナに手をかけてしまいます。
その後、ハーモンに電話するも冷たくあしらわれ、涙ぐむジョシュの悲哀がなんともいえません。
愚かというか、可哀想というか、最初からこうなることを全く想定していなかったのだろうかと、無鉄砲さに呆れます。
最後、ホームセンターでジョシュは働くのかどうかまでは描かれていませんでしたが、元の職場ではすでに事件への関与を疑われていたので、捕まるのは時間の問題のような気がします。
行き当たりばったりの行動により、自分で自分の首をしめていき、どんどん悪い方向へと転落していくジョシュ。
ジェシー・アイゼンバーグが最初から最後まで不安定な表情でうまく演じていました。
この監督の作品では、自分というものがしっかりと持てずに、流されていくばかりの主人公がよく描かれます。
それが悪いことでも良いことでもなく、ただ車や徒歩で移動を繰り返し、形ばかりでなく心も漂流していきます。
到達点を描かないことで、浮遊感のようなものが残り、居心地のいいような悪いような、独特の鑑賞後感を残します。
映画が終わっても、主人公が生きていればその後の人生も続くわけで、起承転結で人生を切り取ってしまわない手法が、私には合うような気がしました。
要領のいいハーモンはうまく逃げ、ジョシュは弱メンタルのせいで決していい方向へは行かないと予想。
ラスト、店内のミラーの映像で終わっているのが、少し意味をつかめずにいるので、再見することがあったら考えてみたいです。