『墓泥棒と失われた女神』映画感想文・絵面に反してキュンキュンのラブストーリー

コメディ色が強いのかな?と思って見たら、とてもロマンチックなお話でした。

本当に素敵で、ほろ苦さもある作品。いい映画でした〜。

↑女神像が幼児体型(笑)

あらすじ

1980年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。忘れられない恋人の影を追う考古学愛好家の青年アーサーには、紀元前に繁栄した古代エトルリア人の遺跡を発見できるという不思議な力があった。アーサーはその能力を利用して墓泥棒の仲間たちと埋葬品を掘り起こしては売りさばいて日銭を稼いでいる。そんなある日、アーサーたちは希少価値を持つ美しい女神像を発見するが、事態は闇のアート市場をも巻き込んだ騒動へと発展していく。

2023年製作/131分/G/イタリア・フランス・スイス合作
原題:La chimera
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2024年7月19日

                                        『映画.com』より引用

感想(ネタバレ含む)

墓泥棒(逃げ遅れ)で服役していた刑務所帰りのアーサー。何度も夢に見るのは亡くなった恋人ベニアミーナの姿です。

前半とてもスローペースでなかなか物語が動かず、一体どうなっていくのか!?と少しハラハラしました。

しかし、とある墓で女神を発掘してからは、凄い推進力でラストまで持っていかれて、実に不思議な映画だなぁと感心しました。

あまりに貧しいアーサーの暮らし。泥棒仲間たちも貧しく、埋葬品の買い手は欲深く、皆、金と欲に目がくらんでいるのですが、それはミスリードであって、本筋は純粋なラブストーリー。

埋葬品をダウジングによって見つけるアーサーは、後になって気づいたのですが、恋人の姿を探し求めていたのです。

現実世界で盗掘を戒めてくれた女性と、幸せになる可能性もありましたが、彼はやめられませんでした。

それは失った彼女の幻想を追い求めることがやめられなかったからなのです。

そっと出ていくアーサーに気づきながらも、黙って見送るイタリアの姿が、とても切ないです。

彼女にはアーサーに好きな女性がいること、自分はその代わりになれないことを、感じ取っていたのでしょう。

それまで、アーサーが盗掘する目的が、お金のためなのか、仲間との友情のためなのか、考古学的興味なのか、いまひとつはかりかねていたのですが、そうか…ベニアミーナを探していたのか!とはっきりわかりました。

なんてロマンチックなんだろうとキュンキュンしました。

また、墓を暴いて破壊していく男性たちに対して、コミュニティを作って生活を作り上げていく女性たちの姿も対比として描かれていたのが印象的でした。

最後、アーサーは土に埋もれてしまったのだろうと私は思っています。

しかし、夢の中の彼女と再会して、最高に幸せそうなアーサーの姿が見られ、ほろ苦いながらも、素敵なラストシーンでした。

アーサー役のジョシュ・オコナーがとにかく素晴らしいです。寂しげな表情、ヨレヨレのくたびれ具合、どういう経緯でイギリスから来たのかよくわからないという謎感、木の棒でダウジングしたり、突然卒倒したり、不思議すぎる人物なのですが、とても魅力的に演じていました。

最近では『チャレンジャーズ』でも好演されていたので、他の作品も見てみようと思います。

余談ですが、劇中歌で状況説明するのが面白く、どこかで聞いたことがある曲だなぁ…と気になっていました。

後で思い出してスッキリしたのですが、ハナ肇とクレイジーキャッツの『悲しきわがこころ』のサビでした(笑)