『まる』映画感想文・丸でもなんでも売れたらいいじゃないの

あらすじでかなり内容に触れていたので、その先どんなことが起こるのかと思ったら不思議展開に。

堂本剛さんは27年ぶりの映画主演だそうですが、なんとなく「堂本剛記念映画」という風情がありました。

剛くんもう45歳なの!?

あらすじ

美大を卒業したもののアートで成功できず、人気現代美術家のアシスタントとして働く沢田。独立する気力さえも失い、言われたことを淡々とこなすだけの日々を過ごしていた。そんなある日、彼は通勤途中の雨の坂道で自転車事故に遭い、右腕にケガをしたために職を失ってしまう。部屋に帰ると、床には1匹の蟻がいた。その蟻に導かれるように描いた○(まる)が知らぬ間にSNSで拡散され、彼は正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名人に。社会現象を巻き起こして誰もが知る存在となる「さわだ」だったが、徐々に○にとらわれ始め……。

2024年製作/117分/G/日本
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2024年10月18日

(『映画.com』より引用)

感想(ネタバレ含む)

全体の印象は、良くも悪くも堂本剛さんらしい映画という感じ。

私は彼の昔のドラマなど、とてもお上手だと思っていて、もっと演技を見たいという気持ちがあったので、今回観に行きました。

しかし、仏教的な側面、アーティストとしての苦悩、人気者になった戸惑いや、世間の評価と気持ちのズレなど、素の堂本さんを連想させる内容で、正直なところ、彼の、もっと違う新しい姿を見たかったです。

2年にわたる監督とのディスカッションがあったそうで、堂本さんご本人に物語を寄せすぎているように見えました。

また、ひっかかるところが多々あり、素直に飲み下せなかったです。

・美大を卒業したものの…って、その後20年以上もどうやって暮らしていたのかが不思議。

・アイディアを提供していながら、骨折したら即クビになるのは解せない。

・コンビニには片手が使えなくてもすぐ採用してくれるのだろうか。

・意味のわからない人が多い。

・中年にさしかかろうという主人公に覇気がなく、無気力。剛くんは可愛いけど、沢田というキャラクターに魅力が感じられない。

・綾野剛が小汚くて悲しい。

・大衆が十把一絡げで愚かに描かれているのが、自分も大衆の一部として見ると不愉快。

円相とやらで運良くブレイクできたのなら、もういい大人なんだし、冷静に考えて上手く利用していけばいいだけの話じゃん…と身も蓋もないことを考えてしまいました。

要領よく生きられないしんどさとか、愛すべき不器用さとか、そういうものが描きたかったのでしょうか。

賢い人があまりいない中で、森崎ウィン演じるモーの存在は光っていました。

彼が一番賢明だったので、もっと物語に食い込む役どころだったら良かったのになと思いました。

何気なく描いた「まる」がブレイクした、ということは、どんなきっかけであろうと大衆の心を掴む力がその絵にあったことに間違いないので、壊して田舎に逃げたりしないで、向き合って幸せになる道を模索してほしかったです。

私は『かもめ食堂』も好きじゃないので、この監督の作品は合わないのかもしれません。申し訳ないけれどしょうがないです。

堂本剛さんは、かなり繊細な方とお見受けしますし、意に沿わない映画ではストレスを感じられるかもしれませんが、これからもっと幅広い役で俳優のお仕事をしてほしいと個人的には願っています。

小さい子どものお父さんの役とか、年齢的にも似合いそうなので見てみたいなと思います。

私の心の中のキャストに入れておこう(3人目)。