インド映画にしては2時間ちょっとと短めで、『RRR』とは違うテイストでした。
とても面白く、最後もきれいに収まるべきところへ収まって、気持ちが良かったです。
どれくらい”ありえない話”なのか、ピンとこないけれど…
目次
大安吉日のインド。育ちも性格も全く異なる2人の女性プールとジャヤは、それぞれの花婿の家へ向かう途中で、同じ満員列車に乗り合わせる。しかし2人とも赤いベールで顔が隠れていたため知らぬ間に入れ替わり、そのまま別の嫁ぎ先に連れて行かれてしまう。予期せぬ旅を通して新しい価値観と可能性に気づいたプールとジャヤは、周囲の人々をも笑顔にしながら、生まれて初めて自分自身の手で人生を切りひらいていく。
2024年製作/124分/G/インド
原題または英題:Laapataa Ladies
配給:松竹
劇場公開日:2024年10月4日(『映画.com』より引用)
花嫁を取り違えたことから起こる騒動を描いていて、映画そのものはとても楽しくコミカルに演出されています。
いわゆる、とてもよくできた映画と言えます。
ただそこには、インドの女性の地位の低さや、昔ながらの価値観、格差社会や警察の腐敗まで、さまざまな問題が含まれていて、考えさせられます。
ユーモアと共に描かれながら、しばしば「インドの女性の置かれた立場」を垣間見て、切ない気持ちになりました。
現代の日本人から見るとありえないようなこと、たとえば「相手をよく知らないまま結婚する」「夫の名前を口に出さない」「若い花嫁が自分の住所もわからない」「一人になって途方に暮れてしまう」「自分の能力も生かせないまま妻としして生きる」などです。
中でも私が気になったのは、元の花嫁プールがとても若いこと。
プールはどう見ても十代半ばに見える、幼さの残った顔立ちをしていました。
演じているニターンシー・ゴーエルさんは、調べてみますと今現在17歳なので、やはり撮影当時は15、6歳ででしょうか。
インド女性の結婚可能な年齢は21歳ですが、それ以前に結婚する方が多く、平均17.7歳という若さだそうです。
この映画では全く語られていませんが、これは児童婚の範疇なのではないか、それも問題のひとつとして提示されているのではないか、と思いました。
プールは新郎ディーパクに対して愛情を持ち、頼りにしているように描かれていましたが、結婚に至った経緯は分からず、プールが自ら選択した道ではないように見えました。
ディーパクはとても優しくハンサムで愛情も深く、良い方なので気持ちよく見られましたが、実際はそうでないことも多々あるでしょう。
親から決められたよく知らない結婚相手に、愛情を持てるとは限りません。それでも「そういうものだ」と思って、妻として生きていくしかないのです。
今作ではとても話がうまくまとまって、プールは見知らぬ土地での出会いや仕事から女性の自立を学び、かたや農業を学びたいジャヤは大学で学ぶ夢を叶えて自由になります。
ただ、その理想的な結末の向こう側で、現実の女性たちがどのように暮らしているのだろうか、今作は2001年の設定ですが、現在ではもっと女性の地位は向上しているのだろうか…と思わずにはいられませんでした。
たしかに、世間の評価は良く、私もいい映画だと思いますが、胸の痛むような感情もあり、手放しで絶賛できない気持ちでした。
これを機にジョイセフ、ホワイトリボン運動など、調べてみようかと思いました。
キャストの皆さんはそれぞれ大変魅力的で、特にジャヤが富永愛に似ているな…と思った瞬間、冨永愛にしか見えなくなりました。とても美しく聡明で魅力的な役どころでした。
(あとで調べていたら、富永愛さんがジョイセフのアンバサダーだったと分かり、偶然に驚きました。)
インドの風景も楽しめて、音楽もふんだんに使われ、考えるきっかけにもなった、よい映画でした。