【U-NEXT】『陪審員2番』(2024)映画感想文・お天道様は見ているってことだと思いました

何故か劇場公開されずに、U-NEXTで配信と言う形のクリント・イーストウッド監督の法廷サスペンスです。

12/20配信開始で早速視聴しました。すごく良かったです。映画館で見たかった!

配信とはもったいない…

あらすじ

雨天の夜に車を運転中、何かをひいたようなので車から出て確認したが周囲に何も発見できなかったジャスティン・ケンプ。その後、ジャスティンは殺人罪に問われた男の裁判で陪審員をすることになるが、やがて彼は「事件当事者」としての強迫観念に苦みだす。

感想(ネタバレ含む)

殺人事件の陪審員になったら、それが実は自分が1年前に起こしたひき逃げ事故だったという話で、本当の加害者であるケンプそして、真実に近づく検察官の女性(名前失念)の心の揺れを描いています。

派手な作品ではありませんが、心理状態を緻密に描いていて、クリント・イーストウッド監督94歳の切れ味の鋭さを感じました。

ケンプは被告人が無罪だとわかっているけれども、彼を無罪にすれば自分が危うくなるという立場です。

彼の中途半端な良心から、自分自身の首を絞めていくことになります。

良心があるから自責の念が生まれるのでしょう。

100%悪人であれば、他人に罪を着せる事は平気でしょうし、100%の善人であれば自分の罪であるとすぐ明らかにするでしょう。

しかし、たいていの人間は、その間のグラデーションの中にあり、 そのため、迷い苦悩するのです。

この映画の怖いところは、誰もが彼の立場に置かれる可能性があるということ。

そのため見ている側は、彼がいつ、どのような決断を下すのかと、緊張を強いられるのです。

私はいつ彼が真実を話すのか?多分告白するのだろうとずっと思っていたのですが、結局彼はケンドルに罪を着せたまま逃れる選択をしました。

いや…気持ちは分かるのですが、他人に殺人の罪を着せるなんてアウトでしょう!

私もこの作品を見ながら、ずっと自分の道徳心に照らし合わせていましたが、黙っているなんて無理だろうという考えに至りました。

死ぬまでそのことを抱えて生きていかなくてはいけない苦しさに比べたら、言って罪を償うなぁ…と思いましたが、ケンプはまだ30代の未来ある若者で、終身刑はつらいでしょう。子育ての終わった50代のワタシとは違いますよね。

そして、人の先入観、偏見の恐ろしさも嫌でしたね。

喧嘩をしていたから、タトゥーがあるから、で、よく調べもしないで被害者の恋人を犯人と決めつけるのもおかしく、目撃者のおじいさんも彼の写真を見せられて間違いないと答えています。

人間ってはっきりしないことにはモヤモヤするので、つい誰でもいいから決めてしまえという心理がはたらくのです。それが本当に怖いです。

この映画の良心は、トニ・コレット演じる検察官です。真実に近づき、自分の立場を危うくするジレンマを抱えて逡巡する演技がすばらしかったです。

ラストで扉の向こうに彼女が現れた時、胸のつかえがおりたような気持ちになりました。

その先は描かれていませんが、多分、ケンプはこれで気持ちが楽になったのではないでしょうか。

子どものためにもそれで良かったと思いました。

主役のニコラス・ホルトって『MAD MAX 怒りのデス・ロード』のニュークス役の人だと、後から分かって驚きました。

前は白塗りだったし、全然違うタイプの役でしたね。ニュークスも悲しい存在で良かったんだよな〜。